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奥田みゆきのパドボコラム 「パドボフィッシング 其の一」

さかな湧き、いわし上陸

「パドボで魚釣りに行こう!」
サーフィンよりもルアーフィッシングでスタンドアップパドルする人が多いのが最近の鎌倉の実態。
パドボに乗っての釣りという新しい試みだから、そのスタイルも人それぞれ。
鎌倉坂の下に住むユウジ君は台風からのグランドスゥェルで混雑するサーフポイントを尻目に、はるか沖で悠々と漕いでいる。もしユウジ君の漕ぐ姿にロッドが見えていたら、それはフィッシング中だということ。狙う魚はシーバス(鱸)だ。
すでに何本も釣り上げているユウジ君、80センチをこえるシーバスを釣り上げたときには、さすがにパドボが引っ張られるが、魚とボードがお互いに近づいてゆくので、大丈夫。
最終的には、元気のよいお魚ちゃんが、すぐ手元にやってくる!

パドボのリーシュプラグにルアーを結んで曵いていたら、カマスが釣れちゃった!というのがそもそものこの釣りブームの発端。
「そんなんだったらオレもやる!」と言出だしたのが、パドボを発明したウチのダンナ、奥田哲。
「パドルしていて、ついでに釣れちゃったら面白いよね」と、おめでたい考えで人生初めてのルアーにチャレンジした。
はじめは適切なアドバイスを求めて、釣り具専門店の敷居をまたぎ、店員相手に「パドルしていて、ついでに釣れちゃったら・・」と、おめでたい理想を語った旦那様だが「パドボで立って漕いでいたら、たまたま釣れちゃった。」というその説明をまったく理解されず(当たり前だけど)逆に「そんなにあまくないですよ~(釣りを舐めんな)」とお説教される始末。
で、しかたないからと、まず買ってきたのがDVD付きHow-to本。だけど、どうやって釣るかなんて考える必要はないのだ。だってパドボで漕いでいるだけで魚が本当に釣れてしまうのだ。
パドボで釣りを始めて最初に釣れたのが40cmのイナダ!!でも釣れてしまって一番焦ったのが、釣り人本人だったというのが、おめでたくもおかしかった。

ただのビギナーズラックなのかと思っていたのだが、その後順調に実績を重ねてカマス、シイラ、サバ、イナダ等等。そしてついに念願の76cmのシーバスも捕らえた。フッコではなくもう立派なスズキだ。ウチのダンナは今や得意満面である。
ルアーやロッドなどの道具も増えた。その先行投資額は、真鯛の100尾も買えるのではないかと思うほど。ヤレヤレ・・・

最近はロッドホルダー仕込みのウエストバックを腰に巻いて、竿を立てて流すのを考案した。あたりがあるとググッと後ろに引かれて、ボードにブレーキがかかるのですぐわかる。パドルを足の間において、流さないように片足で踏み付ける。
おもむろに竿を手に取ったら、そこからは慎重に巻いてゆく。魚影が見えたら、ばらさないように網に誘導する。この時点ではボードに座った方が安全だ。

手元に来た獲物の処理も人それぞれに、数々のアイデアが見られる。
伊東家の食卓をも唸らせるのが「使い捨てネット作戦」台所の排水溝に使用する小さな網を手にはめて、そのまま獲物をつかむとよいそうだ。魚があばれても滑らず逃がさず、そのまま網を裏返すように入れてしまえばオッケー。家の流しの中でその網をビリビリと破いて、ウロコをこすり落としながら、さかなを取り出すのだと。なるほど。

ところで、魚は、パドボについてくるのが好きなようだ。静かでゆっくりとしたパドリングだから魚も警戒心を抱かないのかもしれない。
鎌倉の山々が紅く染まるある晴れた日、材木座海岸から葉山の菜島までパドボで水上散歩に出かけた時のこと・・ 紅葉を愛でながら、ゆっくりと岸沿いに進んでいて、ふと気がつくと海上に小さな泡が浮いてくる。パドボの航跡が作る泡なのかとも思ったが、よく見るとイワシかサバの小魚群れが私のボードに付いて泳いでいることが判った。パドルを始めると見えなくなるのだが、止めるとボードのすぐ脇に、小さな青灰色の背びれが並んでゆっくりと鰭を動かしている。超カワイイ!!
そういえばこんなこともあった。私がスタンドアップパドルボードのレッスンをしたときだ。生徒と和賀江嶋を一回りして帰ってきたとき、小さな波に乗って岸に乗り上げた私のボードのすぐ脇に小さなイワシが砂浜に乗り上げてピチピチ跳ねているではないか、ボードについてきて打上げられたのだ(ターンすることができなかったのね。)とすぐに悟った私は、そのイワシ君を両手の中に救いやさしく海に返してやった。
以来、私はパドボでパドリングしている時に、ふと、後ろを振り返ってみたくなる。もしかして大きな魚が口を開いて、ついて来てきているのかもしれないという想像をめぐらせてしまうのだ。

そして旦那様はなんと50cmオーバーの黒鯛まで釣り上げてしまった。
これには釣りのベテランまでびっくり!!

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