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パドルは波乗りとともに古くから
島々に伝わる文化だ。 |
『キャンプを設営したマタバイ岬の周辺を散策している時、私はひとりの男が懸命に小さなカヌーを漕いでいるのを見かけた。しかもカヌーの両側をひんぱんに見回すその様子が普通ではなく、私は興味を持った。観察を続けるうちに彼が一連の動作を繰り返していることがわかった。男はまず浜辺から沖とのあいだの波のうねりが高まるところまで行くと、波が近付いた時に一気に漕いで、波が彼の上からかぶさる位置、しかもカヌーの下を波が素通りしない場所に、たくみにカヌーを寄せる。このあと彼はカヌーに腰を降ろしているだけで、波の押し寄せる速度で浜へと突進する。そして男は沖へ戻り次の波で同じ運動を繰り返す。
波が滑るようにカヌーを運ぶ時、男は至上の悦楽を感じているようだ。他の人々が私達のテントや船のまわりに、もの珍しげに集まっているのに、カヌーの男は何の興味も示さずただ、自分の行為に嬉々として夢中なのである。やがて他にも何人かカヌーで沖へ出ていくと、同じ喜悦の表情を浮かべ、良さそうなうねりが来ると大声をかけ合っていた。
私はこの運動が彼等の間で盛んに行われていることを知った。爽快感で唯一比較できるものはスケートだろうか。いや、彼等はもっと多くの楽しみを知っているのだろう。』 |